リヨン日本人会短歌クラブ
by リヲンのつばさ
プロフィールを見る
画像一覧
S M T W T F S
1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30

第8回歌会報告(2013年2月4日)

みなさまこんにちは。

2月の歌会の報告です。

みなさまお忙しいところ、題詠、自由歌とも13首ずつ提出頂きました。

以下は2月の歌会お世話役の Te. H. さんとT.Y.さんのご夫妻に執筆頂きました。


みなさまどうぞご鑑賞ください。

*・゜゜・*:.。..。.:*・☆・*:.。. .。.:*・゜゜・**・゜゜・*:.。..。.:*・☆・*:.。. .。.:*・゜゜・*

2013年2月4日 リヲンのつばさ 歌会報告 


題詠歌 : 「震災、再生、復興」

第一席 (六票)

a) 昨日見たテレビの話するように震災語る制服の少女ら   I.M.
 
(作者の説明) 震災後初めて被災地から来た少女たちと直接話をする機会があったが、「大変さ」を悲惨な話し方でなく むしろあっけらかんと話していて、却って その裏に悲惨さが仕舞い込まれているようで衝撃を受けた。

(N.S.さんのメ-ルでのコメント)
今回の題詠部門には、あまりいい歌がないように思いました。東日本大震災に対して、頭では何かしなければと思っても、普通の人は日々の雑事に追われ、少女は目の前の楽しいことに夢中です。私なども、震災に仕事としてはかかわることができても、被災者の心に寄り添ってその気持ちを共有して生きることなど決してできない、しょせんは自分勝手で残酷な生き物だと思います。4番の歌にはそういう人間の弱さと哀しさが表現されていて共感しました。
 こういう大変不幸な出来事を当事者でない人間が歌うことや、実体験したのではなく映像を通じて得た情報を歌うことの難しさ(当事者の方がいらっしゃったら本当にごめんなさい)、1人称の文学と言われている短歌で国家的悲劇をどのように歌えるかなど、いろいろなことを考えさせられました。こうした点について、いろいろ論文なども発表されているでしょうね。

出席者の皆さんから『全く同感』との意見がいくつもありました。

b) 放心の少女坐れる瓦礫から希望の未来訪れんことを  Tsu. H.

(作者の説明) 雑誌で見た茶髪の少女の放心状態の写真にショックを受けて詠んだ。『希望の未来訪れんことを』の部分が平凡だと思ったが、他に良い言葉が浮かんでこなかった。

(S.H.さんからのメ-ルコメント)
あのフランスの雑誌の表紙になった写真の少女を姿が目に浮かびます。
飛んで行って抱きしめてあげたいほどの感慨を受けました。

複数の出席者の方々から このコメントに同感とのご意見が有り、また、暗い出来事を将来明るくあれと温かく表現されており 映像として浮かびやすいとの意見もあった。ただ下の句で少し抽象的な言葉が多いという声も。


第二席(五票)

野蒜(のびる)にはもう行かぬと言う兄が通う峠は今日も雪に覆われ V.R.

(作者の説明) 野蒜海岸は仙台近郊の松島の先で 子供の頃毎年家族で海水浴に行った思い出の海です。でもご存知の通り ここも津波で大きな被害がありました。四つ上の兄は 震災以来海のほうへは足が向かないと言っています。
その兄は福島市に住んでいましたが 震災後家族で仙台に戻ってまいりました。 しかしサラリ-マンの兄は転勤願いも出せず 今も片道1時間半高速で仙台福島を往復しています。宮城県と福島県の境には国見峠というのがありまして 高速でもこの辺りは一番吹雪きやすい場所です。雪が降ると兄は大丈夫だろうか ?と道路状況が心配です。野蒜海岸は私にとりましては夏の象徴みたいなもの。そこに一緒に行っていた兄はまさに今が冬の時期かもしれません。

- 最初読んだときには良くわからなかったが 歌の持つ物語性が面白いのと 歌の進行とともに内容が動いていくのが面白い。
- 大きな被害を受けた野蒜に住む人の歌という気持ちが伝わってくる。
- 『もう行かぬと言う』『兄が通う』の字余りの部分が言いにくいのが気になる。

第三席(四票)

寒空に『さよなら』凛と背を伸ばしあふるる想ひ閉じゆく三月  M.M.

(作者の説明) 震災を詠うのは難しく、この歌は元は自由歌で詠んだ歌。推敲を重ねるうちに、結句を「三月」とした途端、想いは被災地に馳せ、こういう想いで「別れ」に区切りをつけ歩んでいった人もいるかもしれない、また読者もそんな風に共感する人があればと、この歌を題詠歌としました。
もともとの歌のテーマは、3月末の別れから、永遠の別れまで、どんな場合でも「さよなら」するときは一度区切りをつけねばならぬときがあるもの。気持ちを引きずらず顔をあげ、新たな気持ちで歩み生きてゆく姿勢を詠みました。

- 『三月』の学期末で、次に繋がる若いエネルギーを感じる。
- つらい思いを吹っ切り、新しい人生をという思いを感じる。


第四席(二票)

a) 笑顔こそ明日に向かう力と習い ひたすらなる子らの逞しさ O.M.

- 震災の地に自分がいたら……と思いながら 福島の子らを見ていると力が湧く。
- 震災にもめげずひたすら未来に向かう子供たちのけなげさ、逞しさが良く感じられる。
-
b)  地を走る黒き怒涛に息を止め天の怒りに身を伏しおののく  Te.H.

(作者の説明) テレヴィで見た黒い怒涛が眼に焼きついているが、これをどう表現するか悩んだ。太古の昔から、自然の威力の前に人間はただひれ伏すのみだと思った。

- Sさんのメールでのコメント「天の猛威にすべなし……」そしてあのどうしようもない黒、あの3月11日は神戸の病院のベッドの上でどの局も24時間災害を放映していて足の手術の痛みも忘れて画面にくぎ付けで私の実感と重なります。
上記のコメントに同感とのご意見がありました。
- 自分では体験していないのに 何度もあの映像が夢に現れたとの感想もありました。

c)  断末魔 驚愕唖然 声もなし 船も家屋も 津波が運ぶ  T.Y.

- 歌がどうのと言うよりは 現実がそのままリアルに表現されている

第五席(一票)

a) 大空の青に飛び立てこいのぼり独り仰ぎて君を思わん  M.Y.

(作者の説明) 青いこいのぼり、「青いこいのぼりプロジェクト」の元になった5歳で津波で亡くなったこいのぼり好きの陸君のことを考えながら作りました。幼稚園の制服姿で見つかった陸君。今は天使のような大きな翼を得て、大空を羽ばたいて、私たちを見ていると思います。
-誰ともつらい別れをせずに済んだ自分でもつらい思いがするので、作者にはどんなにつらいことだったかと思う。

b) 災難時 生きるも死すも 紙一重 人の運命 誰が決めたもう  G.N.

(作者の説明) 死ぬ人と生きる人の紙一重の違いは 運命として決まっているのかと不思議に思える。

- 作者の思うところがそのもまま素直に詠まれている

c) 別れ告げ生きた証を伝えゆくよりそって生く違うみんなが  Z.T.

(作者の説明) 震災で亡くなった身近な人に別れを告げて生きのびた証を伝える被災者を詠った。

- 震災から生き延びておそらく仮設住宅で見知らぬ同じ境遇の人たちとの避難生活を強いられている被災者の生活が想像される。

d) 雨降りて 地かたまるとて 刻まれたあの日 消えぬと 今日も友は語る S.H.

(作者の説明) 震災に遭った神戸、今はその後影なく復興しましたが体や精神に後遺症が有る方は多くおられます。
あの3月11日、神戸の雨でぬれた坂で転び3本に骨折で病院に運ばれ、病室のテレビは災害報道、福島原発と息を呑みながら食い入り見て足の痛みも忘れるほどでした。

佳作

a) 壊れものを見しときにいずる歌ごころ 黄昏はひとひとしく暮るる  I.I.

(作者の説明) 「壊れもの」を見たとき人の心は謙虚になり、歌心が出てくる。天は平等で弱者にも強者にも等しく日が暮れるのであり自然の前では無力である。
「壊れもの」と言う表現が震災と関連があるかどうか疑問だったという意見に、作者は、大江健三郎の「壊れものとしての人間」と言う表現があるように脆弱な存在と言う意味だという。

b) 震災のニュ-スがはしる リヨンにて 何かせねばと こころせかれる Y.K.

-作者の気持ちが素直に表現されている歌だというコメントが複数の方からありました。


『題』の『震災』は震災を体験しない身で詠むのは難しい。
テ-マが大きすぎて画一的、上滑りになってしまうとの ご意見が複数の方々からありました。



『自由歌』

第一席(五票)

a) 音もなく溶けて消えゆく約束は 叶ふことなく破ることなく M.M.

(作者の説明) 約束は誰かとするものだが、突然の別れによって約束自体が消えてなくなったときに 約束が叶って『嬉しくも』、約束が破られて『悔しくも』感じることができない無念さを詠った。

- イメ-ジがきれいで流れが良いすっきりした良い歌。すんなり読める。
- モノトーンというか少し淡々としすぎている気もする。
- 日常の人間関係の中、日の流れ、時の流れが心の平和につながっていくのかもしれません……。
- いろんな状況で(政治などでも)白黒つかないで、約束は果たされず曖昧になってしまうことが多いのが現実。それを詠んだかと思った。

b) すかんぽの酸味のふかきおくやまに母の生きのぶ屋根にこなゆき I.I.

(作者の説明) 最初に「すかんぽ」と言う言葉があり、それに言葉を繋いでいって出来た歌で『酸味のふかき』が『奥山』の枕詞のように『母の生きのぶ』『こなゆき』につながった。
遠く離れている母親に対する酸っぱい感覚も詠った。

- すかんぽの味は母親の味を想起させ、田舎の景色とともにきれいに詠んでいる。
- 『おくやま』と『生きのぶ』で田舎で苦労して生きている母親のイメ-ジがでている。
- 流れるような綺麗な歌。

c) 地の果てで血汐に染まりし人質にわが同胞の名を聞くはむごし Te. H.

(作者の説明) 最後の『聞くはむごし』の部分は表現を迷った。Mさんのコメントのように 結句を『聞くとは、嗚呼』と言うような表現でも良かったかとも思う。

- 声に出して詠んだ瞬間に圧倒された。情報が過不足なく歌に入っている。
- インパクトがあり心に突き刺さった。
- アルジェリア、そして各地での人質、不法な卑怯な行為に 怒りをぶちつけ。
- 現実に起こったことでまさにその通りだと思った。

d) 優しさを訪ねて行かん雪満てるピユイ山脈へまっすぐ走る N.S.

(作者の説明) オ-ベルニュの田舎にGさんという優しい日本人夫婦が暮らしています。Gさんはオ-ベルニュ日本協会(JANAジャナ)というアソシエ-ションをやっていて 活発な日本文化紹介活動を行い最近よく一緒に仕事をする機会があって 時々オ-ベルニュに行っています。リヨンからクレルモンフェランに向かって高速89号線を西に走りデイエ-ルを過ぎるとピュイド-ムが見えてきます。このピュイ山脈に向かってちょうどまっすぐぶつかるように89号線が伸びていて この道の感じがとても好きで いつも楽しみにしています。

- 『訪ねて行かん』と『雪満てる』でバカンスの明るい気持ちが良く表現されている。
- きっとその地にやさしい友人か知人がいるのだろうと想像した。
- 『まっすぐ走る』が気持ちを良く表現している。

第二席(四票)

わいわいと隣の家に上がり込み 大鵬見るは三つ編み時代 Tsu.H.

(作者の説明) 題詠歌では胸が押しつぶされ苦しかったので、自由歌は明るい開放的な歌を詠みたかった。自宅にテレビが無い三つ編みの頃に隣の家に上がりこんだなつかしい時を思い出し、丁度、大鵬が亡くなった時に重なってこれを詠んだ。

- 昭和の偉大な横綱大鵬が亡くなったとのニュースに、作者の子供時代が思い出されたというお歌でしょうが、それよりも、歌会に参加されている女性方の顔を思い起こしながら、その三つ編みの姿を想像して、とてもほほえましく楽しませていただきました。(N.さんのメールでのコメント)
- 昔の自分を思い出しなつかしい。
- 『隣の家に上がり込み』の表現が懐かしく温かみがある。
- 『わいわいと』という表現が良い。

第三席(二票)

a)  大地震 妻をかばいて 死する友 美談なりとも 悲しき最後  G.N.
(作者の説明) 睡眠中に阪神大地震に遭い、横に寝ていた妻のうえに被さって妻は死を免れたが本人は死んでしまった友人の最期を詠んだ。

(作者は下の句を以下のようにも詠んでいて、読者の反応を知りたがっている
「大地震 妻をかばいて 死する友 美談なりと 知るひとありし」)

- 心にグサッと来た。
- 前半分の句で『美談』とわかるので『美談なりとも』は他の表現でもよかったのではないか。
 
b) つなぐ手の揺れぎこちなく歩きおり終わらぬ話顔見えぬ人と Z.T.

(作者の説明) 男女二人が手をつないで歩いているうちに、どちらにもケイタイが鳴り 別々に話をし始めた。手をつないでいるが別々の心で歩いている状況を詠んだ。

- 読めば読むほど色々な意味に取れて良い歌である。
- 作者がアルツハイマ-の母と手をつないで歩いているが揺れがぎこちなく 何時までも終りなく話をしているなと温かい気持ちで見ている様子だと理解した人もいた。

c) 人はなぜ同じ過ち繰り返すRegreso al amor tango  踊れば M.Y.

(作者の説明) タンゴの名曲Regreso al amor tango(revenir à l’amourの意)、ヨーヨーマの演奏を聴きながら、ふと頭に浮かんだフレーズが「人はなぜ同じ過ち繰り返す」でした。わかっているけど繰り返す、ちょっとバカでその愚かさがいとおしく、人間らしい。そういうのが人生なのかな?なんて運転しながら思いました。若いころには思わなかったことです。

- 『過ちを繰り返す』と『タンゴ踊れば』が対照的できれいな赤い色が眼に浮かぶ。
- 最初読んで良く判らなかったが、わからないのが好き。
- タンゴの曲が聞こえてくるような気がした。
- 人は恋愛でも同じ過ちを繰り返してしまうものだと、タンゴを踊りながら感じた気持ちを詠んだと思った。怪しい感じが良い。

d) まか不思議 砂漠のドバイの 摩天楼 眼だけを見せる 美人行き交う T.Y.

(作者の説明) ドバイに旅した時の異国情緒漂う感じを詠った。全身真っ黒な服に身を包んだ女性たちは、目だけしか見えないが、みな美人だったので驚いた。また、ちらりと見える足先も印象的だった。

- まか不思議というアラビア的言葉と「眼だけを見せる美人」という不思議な表現に、作者がドバイの街に驚き目を見張っている様子がうかがえて、おもしろいと思いました(N.さんコメント)。
- 『まか』という表現が面白い。普通の描写であるが思ったことを素直に表現している。

e) 雪かかる小枝についばむシジュウカラ 窓ごしにみる あたたかさかな O.M.

- 暖かい室内にいて観る庭の景色が絵画的に表現されていて絵になる歌である。

第四席(一票)

a) 七色のクーピーで描くグルグルと二十二月(にじゅうにつき)のよしなしごとを
I.M.

(作者の説明) 22ヶ月になって 『グルグル』とクーピ-で描いている自分の子供は果たして何を考えているのだろうと思いながら詠んだ(ひょっとしたら哲学的なことを考えているのかも……)。

- 五、七、五がきっちり合っている良い歌。『にじゅうにつき』と読むのも面白い。その意味が子供の月齢だと判らなかった人もあった。
- お母さんが自分の子供を眺めている姿がよくわかる

b) フランスの 田舎の町で 突然に フランス人が 日本語話す Y.K. 

(作者の説明) Bourg en Bresseに観光案内したときの出来事で インタ-ネットで二年間の独学で日本語を習得したという正しい日本語の上手なフランス人に出会いびっくり仰天して詠んだ

- フランスの田舎の街を歩いていると、昔は「シノワ」とか言ってよく馬鹿にされたものでしたが、今や隔世の感がありますね。作者の驚きが素直に表現されていて好感を持ちました(N.さんコメント)。

佳作

 陽のぼりて 光さしこみ 刻々と 木木 茂み 山 蘇がえらせて S.H.

(作者の説明) 未だ日が昇らない頃庭は薄墨色の世界、日の出とともにそれぞれの形がはっきりしてくるこのときじっと眺めるのが好きです。

- はじめは切れ切れでチョット読みにくいと思ったが、よく読むと情景が刻々と浮かんでくるいい歌である。
- 森林の静かな朝の風景が目に浮かぶようである。


*・゜゜・*:.。..。.:*・☆・*:.。. .。.:*・゜゜・**・゜゜・*:.。..。.:*・☆・*:.。. .。.:*・゜゜・*

Tさんご夫妻、新しく3点制の投票で集計も大変だったと思います。
お疲れ様でした。

さて、ほろ酔いの会に移りましょう。

e0280187_9312550.jpg



Tsu.H.さん、来月はみんなで三つ網をしてきましょうか?
重たい題詠の後の、明るい作品みながほのぼのとなりました。
それにしても震災を詠うのはほんとに難しかったですね。。。


e0280187_9323860.jpg



どれも美味しく頂きました♪


e0280187_9351078.jpg



お世話役のTeさんご夫妻、ほんとうにお疲れ様でした。
盛りだくさんの歌会となりました^^。



e0280187_9343540.jpg



この日は活発に質問も出て、大変勉強になりましたね。
そして目標は大きく高く持ちましょう^^。


e0280187_936261.jpg



ほとんど頂いてしまった後ですが、牛ちらし、美味しかったです♪


e0280187_9363617.jpg



I.I.さん、貴重な情報をたくさん提供していただきありがとうございます。


e0280187_937191.jpg



この日頂いたワイン。 カベルネ+メルローとカベルネ+シラー。
さて、お味を覚えている方はいらっしゃるかしら♫


e0280187_9394426.jpg



I.M.さん作のアップルパイ。美味しゅうございました。



来月の歌会、題詠は「待つ」です。
そしてひさびさのN.S.さん登場、お世話役を引き受けてくださいました。
楽しみですね^^。


M.M.
[PR]
by tankalyon | 2013-02-08 06:34 | 歌会報告