リヨン日本人会短歌クラブ
by リヲンのつばさ
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第7回歌会報告(2013年1月7日)

リヲンのつばさの歌人のみなさま、リヲンのつばさファンのみなさま
明けましておめでとうございます。
今年も新たな気持ちでどうぞよろしくお願いします。

さて、今年第一回、1月の歌会報告です。

題詠歌、自由歌合わせて32首詠まれました。力作ぞろいです。
どうぞご鑑賞下さい。

以下は、1月の歌会お世話役・司会を務められたV.R.さんが執筆されました。

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二〇一三年一月七日 リヲンのつばさ歌会作品集

題詠歌 : 「新年、新春」
第一席
三票


朱に染まる 東の空に われ祈らん 民の慟哭 すくなき年を (Te.H.)

作者は短歌を詠むにあたり、「上手くなりたい」という気持ちも勿論あるが、それ以前に自分の心に引っかかった事を誠実に詠うよう心がけているという。読者の多くが察したように、この歌はまさに今混乱の極みにあるシリアの人民を念頭に詠った。「朱に染まる」「民の慟哭」などのインパクトのある言葉の為であろうか、作者の強い意志が心に迫って来る。日常の歌が多い中で、作者の信念をストレートに詠んでいるのが新鮮である。信仰の有る無しに関わらず、宗教的な感じがする。一方、「民の慟哭」という表現が強すぎる、「民」という言葉の選択が、高見から見ているようで気になるという意見も出された。また、それぞれの句間のスペースについて、作者は特に考えがあった訳ではないらしいが、区切った事で確かめながら読むような、力強さが出て良いとする意見と、逆になめらかでなく読み辛いとう意見に別れた。いずれにせよ時事を詠む事は難しい。折にふれてそれを主題とする作者の勇気に敬意を表したい。

第二席
二票


赤に染む富士の姿は天下一娘に見せたき思いのひとつ (B.Y.)

赤富士は、夏の終わりから秋にかけてみられる現象で、俳句では夏の季語に成っている。しかし、赤富士は吉祥縁起の象徴とされ、お正月の年賀状などによく使われている。作者の常日頃からの思いを歌にした。詠んだのは前の事らしいが、「赤富士」がおめでたく新春に相応しいのではないかという事で、今回提出した。
赤富士が視覚的なイメージを喚起しやすく、大変素直な歌で、異国に住んでいる親の思いを率直に歌った事が共感をよんだ。
                   
あとなんど年さり年くるかぞえるか凍星(いてぼし)ながめ年守る夜
 (K.H.)

百八つの除夜の鐘よりも少ないであろう寿命を、年を越すたびに改めて思わざるをえない年代になって来た。遠く輝く無数の光、ずっと遥かかなたの昔の光を見つめながら、限りあるものと永遠のものとの混じり合った気持ちを詠った。リズムが良く、同年代には身につまされる共通の思い。「年」の繰り返しもうるさくない。しかし「年守る」という語感が大変良いという一方で、綺麗だけどその意味が分からず、投票に至らなかったという意見がいくつかあった。

初春を迎える宴チェロの音に調律されゆくわれの琴線 (M.M.)

年末にONLのコンサートに赴いた作者。心には不安や迷い等も抱えていたが、チェロのソロ演奏を聴いているうちにそれらが薄らいで行った様子を詠んだ。音楽に自分の心と体が共鳴していく様子が上手く読み込まれている。色々な事があった年を越して新たな気持ちで新年を迎えようという気持ちが、「調律されゆくわれの琴線」という言葉で面白く表現されおり、弦が真っ直ぐに張ったイメージや、チェロの深い音色も想像され、効果を出している。

孫帰り 美酒を肴に 語り合う
     古希の夫婦の 静かな新春
 (T.Y.)

生来体の弱い妻が今年は古希を迎え、一緒にここまで齢を重ねられた事にひときわ感慨を覚える。どこまでも優しく、素敵なご夫妻の絆が、読者には羨ましい限り。お孫さんとの賑やかな時間の後、ご夫妻が満足感を覚えつつお二人の静かな生活に戻って行く様子が目に浮かぶようだ。
                               
まっさらのふたつのまなこ加わりぬこころの除夜の音ふくよかに 
(I.I.)

年末に生まれた孫を迎えて過ごす年越しを詠んだ。人生の除夜の音を聞くようになった作者の心が、家族に新しく加わった赤ちゃんの存在によって温まる様子が伺える。大晦日の厳かさと、生命の誕生、命がつながっていくというイメージがリンクし、また新しい年への期待と、赤ちゃんが歩むであろう未来への祝福が上手にリンクしている。

第三席
一票


元旦の カフェオレの香 杏ジャム 昨日が去年に ひとつ年取り (M.Y.)

とうとうと流れる時の中で、新年と言えど、昨日と特に何もかわらず。変わるのは人間の作った時間の単位のみという意で詠んだ。フランスでは元旦の日も普段と特に変わらないので、まさにこれがフランスのお正月の風景である。「ひとつ年取り」というのは、数え年の事であろうか。

黒漆 湯気立つ上に 鎮座する 柚子の香りに ループする朝 (V.R.)

作者のお正月は毎年同じお節を、同じ器で、同じ配置で、同じメンバーと過ごすもの。お雑煮の蓋を明け、ちょこんと乗せられた柚子の香りを嗅ぐ瞬間が、作者に取ってまさに一年の起点であり、毎年その瞬間に戻って来る(ループする)のである。「ループ」というカタカナが新鮮という一方で、「ループ」という言葉に馴染み無く、作者の意図が分からなかったという意見も多かった。

曾祖母の刺したイニシャルすましてる白いリネンで気持ち新たに (Z.T.)

曾祖母が嫁ぐときに用意した24組のシーツ類。そのうちテーブルクロスとお揃いのナプキンセット一組、シーツ一組を引き継いでいる作者。アンティークの布は折り込みがしっかりしていて厚地なので手入れも大変である。その為、普段使う事はないが、お正月にはやはりそれを出して、ひきしまった気持ちで新たな年を迎えたい。「すましている」という言葉遣いが上手く、「リネン」の語感も柔らかい。洋風の正統な祭事の迎え方、装いが伝わると同時に、伝統が家族の中にしっかりと息づいている事も感じさせられる、静かな温かい歌である。

バッハ弾き年越すことをモットーに いつしか五度目の干支めぐりたり (Tsu.H.)

学生の頃からバッハの無伴奏ヴァイオリンを一人弾きながら年を越す事をモットーとしてきた作者。「五度目の干支めぐりたり」とは5回目の年女を迎えるという意味だそう。「モットー」という言葉が気になるという意見があり、他の言い回しが出来ないか?と考えたが、やはりそれは「モットー」としか言いようが無いと一同納得。

初詣 厳粛なれど 参拝は 神頼みの 願い事多し (G.N.)

現実的で、くすっと笑える歌である。リズムも良く、自然で上手い。

その他の作品

新しき朝の光と 喜びにあふれる笑顔の並ぶ幸せ 

お正月は目を覚ました時から何故か嬉しくて、いつもの「おはよう」の代わりの「あけましておめでとうございます」の挨拶も新しく感じてつい、笑顔になる。今年もみんな揃ってお正月を迎えられた幸せを感じる一日を詠んだ。喜びがストレートに表現されていて良いとされる一方、「幸せ」を他の言葉で表現出来たのではという意見もあった。

お供えの パンとみかんの 鏡餅 手を合わせて 明日を祈る 

作者が学生の頃、学生食堂で有り合わせの物を鏡餅に見たてたお正月の思い出を詠んだ。質素さが却って「祈る」という厳粛な気持ちを引き立てている。

鏡餅手作りできる自慢げにだけど本当は簡単レンジ
 
出来るだけ日本らしい新年をと思ってもなかなかそうはいかない中で、簡単に電子レンジで鏡餅が出来るだけでもありがたいと詠んだ歌。上記の歌と同じく、異国にいてもお正月を日本人らしく迎えたいという心持ちが愛おしい。ちなみに作っているのは奥様だそうです。

昨日と変わらぬ日なのに一夜明け心あらたまる元旦の朝 

共感出来る、素直な歌である。一方、作者の個性が足りないという意見もあった。

気持ちとは裏腹ぎこちない会話 卸したての靴 まどう爪先 

作者は「新年、新春」から派生して「新しいもの」にちなみ、好きな人と初めてデートした昔の思い出を詠んだ。読者には状況が分かり辛く、新年会であまり親しくない人と戸惑いながら挨拶を交わしているのでは?等と推察したが、作者の説明を聞いて一同納得した。

自由歌

第一席
四票

                      
風花を 眺める母の 背の向こう 白き太陽(ひかり)の 覚束なさよ
 (V.R.)
 
太陽に雲がかかり空気が白くぼやける中、初雪とも呼べぬような風花が舞っている。これが東北の長い冬の始まりであり、それを眺めている母の背中には老いを認めずにはいられない。そこから思わず目を反らしたくなり、この年になっても何と頼りない心であるか、という気持ちを詠んだ。「太陽」を「ひかり」と読ませた工夫が良い。「風花」「覚束なさ」など、儚げな風景が、「いつか消えてしまうかもしれない母」という滞在的な恐れを絵画的に表現している。
 
      
はしばみの葉芽(ようが)みどりに膨らみぬ 芽吹け彼の地で旅立つきみも 
(Z.T.)

はしばみはNoisetier。ノエルの翌日、散歩中に見たはしばみは早くも芽吹き始めていた。もうすぐ新天地へと旅立つ愛娘を思って詠んだ歌。遠くから子を思う親心が優しく詠われている。「はしばみ」「葉芽」など、普段使われない言葉が上手に用いられており、リズムと音が良い。また、ただ場面を詠むのとは違って気持ちが入っているのが良いという意見もあった。

第二席
三票


幾千の花から選びし一輪を忘れまするなその香その意思を (M.M.)

星の王子様のバラをイメージして詠んだ。「意思」とは、そのバラを選んだ人のものでもあり、またそこに咲いていたバラのものでもある。人生の大事な場面で多くの選択肢の中から一つのものを選んだのなら、その一つだけが持っている特徴・意味と、選んだ決意を忘れないで欲しいというメッセージ。一輪に託す気持ちがロマンチックでもあり、強いメッセージの感じられる歌である。音や、漢字とひらがなのバランスも良い。kizunaプロジェクトを思った読者もいた。

第三席
二票


懐かしきメロディ響き時雨の夜 瞼の裏に滲むふるさと (I.M.)

コーラス ミモザに捧ぐ。過日の天皇誕生日に開かれたミモザのコンサートで唱歌「故郷」が歌われた。その際に初めてこの歌の2、3番の歌詞までじっくり聴いた時の、込み上げるような想いを詠んだ。記憶の底にある昔のメロディーを聴いた瞬間に、その空間に引き戻されていくような感じを素直に捉えた歌。特にこの歌は多くの日本人の心に響き、読者の共感を呼んだ。落涙を「滲む」と控えめに表現したのも良い。

第四席
一票


献血で血が減っちゃうと不安顔親を思う子頬ゆるむ親(F.M.)

血小板献血に行く日、これは時間もかかって疲れるという話をしていると、娘がパパの血が減っちゃうのイヤと心配してくれたのが嬉しくて詠んだ。情景が微笑ましく、心の温まる歌である。

新春の祝いの言葉に包まれて 家族一緒に今年も始まる  (P.M.)

お正月は家族一緒におめでとうを伝え合い、温かい気持ちになり、また皆で日常を過ごすという確認が出来るはじめの一歩の一日を詠んだ。良い意味で余分のない、すっきりした歌である。投票者は、言の葉に乗せて気持ちを伝えあう家族の光景に自分自身も温かく包まれた、と感想を述べた。

つま先の つめたきわれを かき抱く 君いなき日は いかに眠らん (Te.H.)

相聞歌の伝統に則った歌。「つま先」「かき抱く」など、ディテールが上手く、作者の心情が良く伝わる。作者は「冷え性なので湯たんぽ代わりです」と謙遜していらしたが、読者には微笑ましく羨ましい限り。
           
二人して 歩みし 年月(としつき) 顧みて
       妻の苦労を 古希の顔に観る
 (T.Y.)

生来体の弱い妻が古希を迎えた。体調が悪いと顔色に出るので、常々注意して見守って来たその顔を改めて見ると、二人でここまで長く一緒に過ごせた事に感慨を覚える。ひたすら優しく、穏やかで、ご夫妻の強い絆を強く感じられるような素敵な歌である。

夢みたか サボテン一花(いっか) 遠い空 真冬の窓辺陽のしずく冴える (K.H.)

遠い、熱い山の奥から密輸して来たサボテンがある朝いきなり花開いた。ここは真冬、暖かい部屋の中。故郷から遠く離れた自分に重ねた望郷の歌。「私は夢を見たままで、まだ咲いていませんが。」とは作者の弁。真冬の窓辺で弱い太陽を頼りに花を咲かせているサボテンの孤独な様子や、一途さが切なく、それに己の心情を重ねて詠む、作者の個性的な視点に感服する。

その他の作品

菓子折りの包装紙をもすてがたくしばし見入る日本の文様 

文様史に関心がある作者は、常日頃から古い布のコレクション等、デザイン的に面白いものについ目をひかれる。日本の包装紙の美しさは断トツであると、一同納得。

禁断の魔法の箱の太鼓呼ぶ祖母にねだりし5円の重み 

子供の頃、自転車の紙芝居屋さんは5円の水飴を買うと紙芝居を読んでくれた。紙芝居の始まりには太鼓が鳴り、心ときめかせたものだ。しかし、親はなかなか買ってくれなかったので、孫に甘い祖母にねだって連れて行ってもらった思い出を詠んだ。面白いけれど良く分からない、謎掛けのような歌であると評されたが、一人Y.K.さんが「紙芝居では?」と言い当てられた。

正月の お屠蘇飲みたし 飲めなくも せめて食べたや 七草雑煮 

学生の頃の思い出を詠んだ。ストレートでユーモラスな調子が良い。

       
たわむ木が海風(うみかぜ)をしめす断崖で 君の濡れ髪われを占う 


大西洋やアイルランドの海をイメージした。一緒にいた女性の髪の靡く方向で、彼女の心が自分に靡くか占っている。映画のワンシーンみたいで美しいという一方で、現実的でないという意見もあった。
                
はりつめたガラスのごとき夜気(やき)の中星のごとくに輝くソーヌ 


厳しい寒さのリヨンの風景を透明な感じで詠っているのが良い。しかし、「星のごとく輝くソーヌ」という状況がイメージ出来ないという意見もあった。波の事であろうか?また「ごとき」「ごとく」と続くのも気になる。

ひび割れの かたい指先育めり 冷たくとける 蜜満つ ポワール 

La Croix-Rousseのマルシェに来る、美味しい洋梨を作るおじさんに捧ぐ。口数少ないが、素晴らしくおいしい洋梨を作り、いつも熟れた洋梨を選んでくれるおじさん、冷たい蜜が口いっぱいに溶けるような、中が真っ白な洋梨を、おじさんのがさがさで固いひび割れた指先が作っているのかと思うと、その対局的な質感にちょっと驚かされる。「ひび割れた」の対象が分からず、状況がうまく伝わらなかったが、作者の解説に一同納得した。

病に臥す 心情無念や 帰途につく(帰国する) 思いいずるは 懐かしき故郷

作者の100歳の叔母が話す作者の祖父に起きた出来事。祖父はアメリカに4〜5年いたが、志半ばで帰国し、帰国の船の中で、病を得た若い日本人と出会う。その若者は船上で還らぬ人となり、船長の計らいで船内で日本式の弔いの儀式を行った。やがて船は横浜港に着き、迎えに来ていた若者の両親に、彼の遺言と遺品を渡す祖父。現代だったら助かったかも、間に合ったかも、という思いで、その若者を偲び詠んだ。


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お世話役のV.R.さん、報告作成&コメントありがとうございました。


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さて、ほろ酔い新年会を始めましょう♪

新年とあり、豪華な和風のお料理が所狭しと並びました。


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美味しい日本酒も頂きました♪


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念願かなって初参加のS.H.さん。ベテラン組の B.Y. さんとG.N.さんにはさまれて^^。


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歌の提出は常連組ですが、歌会&ほろ酔いの会は初参加のI.M.さん(右)。
Z.T.さん、自由歌の第一席獲得おめでとうございます^^。


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とにかく美味しいお料理の数々。推薦の歌勉強会も後にして、ほろ酔い新年会は盛り上がりました。



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題詠歌、第一席獲得のTe.H.さん。時事の歌を詠われたのは、数ヶ月前のシリアの歌と
合わせて、Te.H.さんのみです。
そして、自由歌ではがらっと変って、色っぽい歌を詠われ、拍手喝さいでした^^。


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久しぶりに参加されたI.Y.さん。ご持参頂いた美味しい日本酒を参加者に注いで周られました。ありがとうございました^^。Te.Y.さんと。


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B.Y.さん、特製の煮物。見た目もお味も美味しかったです^^。



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今月の司会。V.R.さん。お疲れ様でした。
自由歌、第一席のお歌は、ため息がでそうな美しい歌でしたね。

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ブログファンには、お料理のお写真も人気だとか?
ほろ酔いの会も楽しいですよ。みなさん、見学に来てくださいね。

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今月も期待を裏切らないで「せつなさ、質素感」を詠われたY.K.さん。


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日本酒、シャンパーニュ、そしてガレットもありました♪という証拠に冠も入れて。


みなさまお疲れ様でした。

次回の歌会は2月4日(月)
題詠は「震災、復興、再生」です。
お世話役は、寺田夫妻が担当されます。
どうぞよろしくお願いします。


M.M.
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by tankalyon | 2013-01-11 05:33 | 歌会報告