リヨン日本人会短歌クラブ
by リヲンのつばさ
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第6回歌会報告(2012年12月3日)

12月の歌会の報告です。

題詠:酒、部門にはさまざまなお酒の歌が詠まれました。哀愁にひたり酒を呑む歌、仲間とともにワイングラスを傾ける歌、一人心地よくほろ酔う歌、はたまたご自身に酔う方、バラエティに富んでいます。
また、自由歌部門も、さまざまな場面を詠った多様性ある作品集となりました。

どうぞご鑑賞ください。

*今回の3~4行コメントは、12月の司会・世話役を務めたM.M.が執筆致しました。


二〇一二年十二月三日「リヲンのつばさ」歌会作品集

【 題詠:酒 】

第一席
四票

グラス持ちふわりとソファーに身を沈め ビル・エヴァンス聴く 静寂の時 Tsu.H.
                              
疲れた夜に一人ワイングラスを手に、ふかふかのクッションのあるソファに座り
ビル・エヴァンスのジャズピアノを聴きながら心が落ち着いていく様子を詠った。ふわっとした雰囲気に、子育てや雑事に忙しい女性陣から「こんなひとときを過ごしたい」と憧れの票が集まった。

第二席
三票
   
    
歌詠う我に酔いつつ黄昏て旧知の君が笑う横顔     N.M.
                             
歌会に参加していることに酔っている作者に、旧知の友人は信じられない様子で笑っている夕方の一場面。歌会参加者には「自分の歌に酔いながらも、後で合評を受けて失笑する・される」経験を持つ者も少なくなく共感を得た。「黄昏て」という言葉が綺麗。

冬の酒激しく飲みて耳澄ます姨捨山の風誘うを   N.S.

「激しく」と「姥捨山」というかなりインパクトの強い言葉があり、作者の境遇・健康状態を心配する読者が多かった。作者は「寒い冬、強い酒が欲しくなり、柔肌の熱き血潮も恋しくなる。しかし肉体の衰えを自覚する中、美しく終えることはあきらめて行くことだと気持ちは強く持ち、自分を鼓舞するように今日も強い酒を飲む」とコメント。みな心配しています。お身体をお大事に。                            

第三席
二票

    さまよい  すなぼこり    さぼてん
しらぬ町彷徨い歩き砂埃喉を潤す仙人掌のしずく  K.H.                             
ただ砂埃にまみれて一日がすぎる旅先で、サボテンの凝縮した液体が、砂漠化した身体に沁みとおっていく様子を詠った。難しい漢字の羅列がかえって美しく、異国の風景を浮かばせ、同時に虚構性を醸し出している。
                            
第四席
一票

あま酒の匂いにつられあつまりぬ蟻たちの目は優しさに飢えて I.I.
                            
甘いものに集まる蟻の行為を擬人的に捉えた発想で、酒飲みたちが寄り集まって酒を呑む様を詠んだ歌。酒飲みたちは、本当に欲しいものは酒ではなく、人とのふれあい・和みであると作者は説いている。
                             
缶ビール もう一滴も 出てこない しんと静まる 新月の夜  Y.K.
                         
1缶しかないビールを飲み干した後のわびしさを詠った。前半だけだとパロディにも取れるが、下の句の「しんと静まる」様子で歌が締まり、「新月の夜」で詩的な世界へ読者を誘い切ない様子が伝わってくる。

「飲めないの?」皆不思議がり「飲めないの」吾うなだれる秋のほろ酔い B.Y.

目の前に一升瓶を置かれてしまうほど、飲めそうに見える作者。飲めないことをそれほど気にせずにいたが、ほろ酔いの会で、皆に「飲めないの?」と聞かれることが申し訳なくうなだれてしまうとのこと。「飲めないの」という同じ言葉に違うニュアンスがあり良いという意見と、片方は「飲まないの」にしてもよかったのではと意見が分かれた。

ほろ酔いて 浮世を忘れ まどろみる 心身の疲れ ほぐされ消えゆる G.N.
                            
風呂上がりにほろ酔い、少しうたた寝していると、多忙で疲れた身体が癒されていく。ワインなのかお酒なのか、具体的な言葉を入れるほうが歌が生きてくるのではないか。言いたいことを言いすぎているのが残念との意見も。

その他の作品

去る友に開けたワインを存分に堪能するも寂寥ぬぐえず
                           
中国の詩の雰囲気がある、友を送るときに酒をともに飲んだ時の歌。とても良いワインを友人のために開け、美味しく味わうものの、楽しみきれない心の葛藤を丁寧に詠っている。「去る」という言葉が、音的、漢字の意味的に良くないのではという意見と、「去る」からこそ「寂寥」があるからいいのではという意見があった。

霜降りて誰言うとなく集いし夜友の香立ちぬRullyあくなり
                             
友人が亡くなり、一年経って仲間が集い、その友人が好きだったワインを飲んで偲んだ歌。前半が綺麗だが、ヒントが少なく、歌からその状況を思い描くのは難しかった。

初恋も永久の愛をも流しませロゼの泡あかつきの星と消ゆ

歌のテーマは「いろんな恋愛があるけれど、ロゼシャンパンのようにほの甘く、淡く、明け方に星が消えていくように、シャンパンの泡が消えるように、しょせん儚くせつないもの」らしいが、初恋はともかく、永久の愛まですべて消してしまうのはよくない、と反対意見が多く読者の共感を得られなった。作者により、その後変更された歌は「初恋も幻の愛も流しませロゼの泡暁の星と消ゆ」。

夫婦茶碗ならぬ双子のフルートを微かに鳴らし記念日の夜
                             
「双子のフルート」は2客のシャンパングラスのこと。しかしそれがわかった読者は少なく、ほとんどの人が「双子がフルートを演奏?」「二つのフルートが鳴っている?」と思ってしまった。幼い子供が寝静まってから結婚記念日を夫婦で静かに乾杯したときの歌だが、それが伝わらなかった。

よせてひく 波にいだかれ くれないの SYRAHぽつりと われを見つめる
                            
作者本人も「わからない系の歌」と称しているように、読者も歌の世界を理解できず。
「浜辺にワインボトルがあるのか?」と悩む人もいたが、おそらく恋愛事情を遠回しに語っているのではないだろうか。「よせてひく波」は何を表しているのだろう。

【 自由歌部門 】
第一席
三票


ささくれも  なめらかにするささやきで ベース爪弾く細野晴臣 M.Y.
                           
細野晴臣が爪弾くベースと低音の声が、「ささやき」のように苛立つ気持ちを鎮めてくれる。30年来のファンが詠った細野賛歌。音は似ているが反するイメージを持つ「ささくれ」と「ささやき」の二つのことばがうまく使われている。

まじまじとお菓子の好きなパリジェンヌたかがアズキの甘煮じゃないの B.Y.
                           
見た目も美しく、凝ったフランス菓子の方が素晴らしいと思っているパリジェンヌが餡の和菓子を見てのつぶやき。しかし読者には、「料理が得意な作者が餡子菓子なんて簡単にできるのよ」とフランス人に説明している歌だと思った人が多かった。
両方の視点があっておもしろい。

第二席
二票


いちごという漢字をなぞりてまぶたとづ あふるるおもい母になるきみに   I.I.
                         
苺という漢字を見て、ふと自分の娘が母になることを想い詠った歌。読者の中には「一期一会」の「いちご」だと思い、親子の出逢いに感動して票を入れた人も。生まれてくる子供が「いちご」という名前なのかと思った人も数名いたが。。
  
越冬に発つ薄紅の鳥の群れ想い花咲くシャコバサボテン I.M.
                            
7年越しのシャコバサボテン(またの名をクリスマス・カクタス)が一斉に開花し、飛び立つ鳥の群れを想像した歌。赤く広がる花は、まさにフラミンゴたちが羽ばたくよう。第一句の「越冬」が読者を惹きつけ、均衡がとれたいい歌である。

木漏れ日がまだらに照らす男の子追うやさしき視線に笑顔ふりむき Z.T.
                            
秋の木漏れ日の中、男の子が走り、それを温かく見守る親の視線と、ちゃんと見てくれているか確かめるよう振りむく幼子の笑顔が目に浮かぶ。情報が多いにもかかわらず、綺麗にまとめあたたかい感じが伝わってくる。

新橋の あなたと飲んだ うまい酒 また何時くるか 心おどらん Y.K.
                        
昔からの飲み友達と新橋で飲んだ酒を思い出して詠った歌。シンプルだが共感を呼ぶ。銀座ではなく「新橋」という普通っぽいのがいいと投票した人も。こんなふうに気の合う友とお酒を飲み語り明かしてみたいとの声もあった。


第三席
一票


SMS 着『トチュウ キリ デ ゲンソウテキ、 シロイタイヨウ タビノミチヅレ』    K.H.               
TGVで遠くへ行く知人から早朝届いたメッセージ。カタカナ表現で無機質なSMSの記号の羅列が、現像液の中で冬の幻想的なイメージが浮かび上がってくるような、ほんの一瞬を表した。漢字表記と違い、カタカナ表記で異次元からのメッセージの雰囲気も。


借りた本返したはずがサイトではまだ未返却あす図書館へ
F.M.
                                         
日常的なひとこま。先進国とはいえ、システマティックではいないフランス社会にため息をつきながらも、また図書館へ行く作者の姿が目に浮かぶ。しかし歌には恨み節はなく、仕方なくとも前向きな姿勢が感じられ好感をもつ人が多かった。

その他の作品
          
いにしへの光の女神に誘われ灯りし炎胸に守りて

敬虔な信者がろうそくを胸に巡礼する歌かと思った読者が多かった。じつはリヨンのルミエールの祭典への想い、特に昨年日本からやってきた夜高の人々との心の交流を忘れず胸に灯し続けたいという想いをこめた歌。
                             
SNS 発信欲に操られいわぬが金と思い返すも

                            
 「沈黙は金、雄弁は銀」と心の中で思いながら、SNS(ソーシャルネットワークサービス)ではついつい情報発信やコメントをしてしまう自分を詠った歌。便利なネット時代、情報を収集するも発信するも限度をわきまえたいと、この歌は勧告しているようだ。
                                                    
玉手箱 長不死身の 白煙 亀と迷いしは 異次元郷なり
                            
「浦島太郎」の物語が好きな作者。亀号の宇宙船で宇宙、もしくは四次元へ行きたい願望と、浦島太郎のストーリーを歌に詠ってみたものの、読者にはなかなか理解されず。

        -イタリア国境に近いサオルジュという村に滞在中の歌ー 
夕暮れに石だたみ打つ雨の音 向かい窓のシーツ静かにゆれる

異国映画のような情景を写実的に詠んでいて、前半は綺麗だが、後半のイメージがさらに膨らまなかったのは残念。 細い路地に揺れる洗濯物のシーツが印象的だったそうだが、雨上がりのさわやかな雰囲気があればよかったとの意見が。  





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さてさて、ほろ酔いの会を始めましょう。 乾杯♪


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慣れぬ進行役M.M.にお付き合いいただき、みなさまありがとうございました。
ほっと一息^^。

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乾杯はコンドリュー♪ と葡萄ジュース♪


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N.M.さん、会を盛り上げていただき、ありがとうございます。


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初めての第一席獲得、T.H.さん、おめでとうございます。女性のあこがれの歌となりました。


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Y.K.さん、最近好調ですね。缶ビールの歌、結構好きです♪


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ほろ酔いはすすみ、ガーイヤックの白、そして日本酒まで突入!
美味しく頂きました。

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久々にご参加いただいたG.N.さん、一期一会、浦島太郎、楽しかったです。


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そして締めは、N.M.さんにご持参頂いた、m.m.の(私ではありません、ケーキ屋さんの名前です)プチガトーで♪

みなさま、お疲れ様でした。


M.M.
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by tankalyon | 2012-12-08 01:06 | 歌会報告