リヨン日本人会短歌クラブ
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第4回歌会の報告(2012年10月1日)

みなさま,10月の歌会もほろ酔いの会も盛り上がりましたが,「宴の後のもの哀しさ」はございませんでしたか,はたまた,立ち直られましたでしょうか?
10月の歌会の報告をさせていただきます。

今回は題詠:「月」部門と自由歌部門の歌、それぞれ1首ずつ提出していただきました。

3行コメントは,10月の歌会で司会&世話役を務めたN.M.さんが執筆されました。

どうぞご鑑賞ください。

二〇一二年十月一日「リヲンのつばさ」歌会作品集

【 題詠:「月」部門 】

第一席(三票)

中空の月の雫はシャルドネかグラスに受けてきみと乾杯 Te.H.
ベランダから見える三日月からきらめくしずくが流れ落ちてくる。作者は直感で,これは「シャルドネだ!」と思い,旦那様と白ワインを傾ける。ポスターや絵画のような,きれいな調子で詠まれており,読んでいる人もいい気持ちになる。

第二席(二票)

有明の月が見透かす心の淵に佇む吾に何時か(いつか)のゆううつ V.R.
明け方,まだ空に残っている月に心の中をすべてを見透かされているようなメランコリーを,リズムを持たせて詠っている。作者は結句をわざとぼかしたが,具体的なことを入れるほうがいいのではという指摘があった。

喚声を浴び月までも伸びていく白球静かに満ちてくる意志
 N.S.
野球好きのおじさんが,横浜球場で見た力強いホームラン。その打球の勢いからおじさんは活力を得る。地球の重力を感じさせる,はつらつとしたスポーツを詠った歌である。

人知れず昼間の月が見つめおり昨夜(きぞ)の宴のあとは哀しく Z.T.
盛大なパーティーは終わり,翌日一人で片づけをしていると,昼間の月が見え,もの悲しさをいっそう感じさせる。ただ,「宴の後→哀しさ」は平凡であり,もう少しひねっても良いかとの指摘があった。

まどろみの月光りほのかにふたりいて今この時を繭に閉じ込める M.Y.
形のぼやけた朧月,朝が来ずに,ずっとこの静けさのなか二人でいられればと思う歌。女性的な,おぼろげな余韻を残すすてきな歌である。最後の部分を「繭に閉じ込む」としても良いのではという指摘があった。

「ママ見て!」と伸ばす指先白墨のひこうき雲と真昼の月と I.M.
長男が得意そうな様子で指さす先を見上げると,まるで水色の空に彼が白墨(チョーク)で落書きしたような擦れたひこうき雲と白い月が浮かんでいた。当日の参加者から,「このシーン私にもあったんです。でもこんな風に読めるのはすごい!」と。

第三席(一票)

あそこから向こうの世界へ出られるよ幼く眺めたまあるい月 K.H.
作者は,幼少の頃の夜空についての思いを詠んだものであるということで驚き。自分が閉鎖された空間の中におり,星や月は(採集した昆虫を箱に入れる時に箱にあける)空気穴のようだと。当日の参加者は,月が別の次元への通路になっていて,エネルギーを与えてくれる印象をもつと感想を述べた。

急ぎ足街頭曇る裏通りこれでもいいか今宵は月見 N.M.
仕事帰り,サラリーマンが飲み屋ではなく家へ急いで帰る道すがら,蜘蛛の巣にまみれたレトロ電球を見て,あきらめ混じりにその電球で月見代わり。もう少し言葉選びに推敲を重ねるべきだ。

仲秋の満月に見る餅つきを彼岸でともに愛でる楽しみ T.Y.
季節の移り変わりを感じるとともに,また一つ年をとったことを思う。一瞬「死」について頭をよぎるが,どうせあの世でも奥様と再会し,こうやって(ワインを傾けつつ)中秋の名月でも見るからと。私もTさんと同じ年齢になったとき,こういうすてきな歌が詠めるかどうか。

日が落ちてたゆたう雲間に顔を出す輝く月に心癒され Tu.H.
仕事から疲れて帰ってきたら,外には姿を現したばかりの形も定まらないふしぎな月がただよっている。我が家でほっと一息ついたときに月が疲れを癒やしてくれるよう。下の句が難しい。ネタばらしにならない程度で,全く異なる要素を入れてみてはいかがかと指摘あり。

夕映えのローヌ河ゆく白鳥の親子を照らす三日月の笑み M.M.
作者は,もっと多くの事を一つの歌の中に入れたかったが,焦点がぼけるので,言葉選びに推敲したようだ。作者の撮影した写真を見たことがある人には,美しいローヌ川の情景が浮かんでくるようだが,それ以外の人にはうまく伝えられなかったようだ。一つの歌に込める情報量のバランスが難しいことを勉強させられる歌である。

その他作品

満月のやさしい光につつまれて心の対話金色の夜
低い位置で金色に輝く月の光が,心の中の悩みやもやもやを解消し,どうでもいい気分にしてくれる。色鮮やかな情景が浮かんできそうな歌である。「金色」が唐突に現れるという指摘と,心の対話についての示唆する言葉があっても良かったという指摘があった。

めくら抱き君をハグしたあの朝も肩ごしに笑いしペーパームーン

ある若者が女に飛び込んでいくような情景を,あえて差別用語である「めくら」という言葉を用いて表現している。忌み嫌われる言葉やタブーを犯すような言葉を用いることで,物事を強調する技法であり勉強になる。


【 自由歌部門 】

第一席(七票)


折節の思い集めて裂(きれ)合わせ動く心を縫い込む夜長 Z.T.
パッチワークでは,いろいろな人に頂いた思い出の服の端切れも縫い合わせることもある。落ち込んだ気持ちや,すれ違った心は,布の思い出とともに夜が縫い込んでくれる。言葉選びが絶妙で,美しく,しかも哀れであり,文句なしといっても良いのではないか。得票数にも現れている。

第二席(四票)

老いぬれば僻(ひが)むな嫉(そね)むな背筋張れ墓石蹴飛ばし歌道に励め Te.H.
作者は「年をとってくると邪悪な心が出てくる」と,下の句でわざと,縁起の悪い表現を詠んだ。一方で,元気なふざけ方は生き生きとした印象を与え,多くの出席者はそのはつらつさに共感した。さらに末尾で,この歌会と絡める意外性は,「技あり」。

第三席(二票)

君よりも少し肩幅大きくて背負ってやりたくなるCartable(ランドセル) I.M.
小学一年生になった作者の息子,フランス風ランドセルを担いだ後ろ姿はなにか頼りなく,代わりに背負ってやりたい気分。フランス語のCartableを「ランドセル」と読ませることでフランスの風景となり,その情景が思い浮かぶ表現力豊かな歌である。下の句の「やりたくなる」がもう少し短くできなかったのか,という指摘あり。

金木犀鈴虫の声梨畑幼き日々の秋の風景 P.M.
フランスにはない秋の日本の風景。美しいリズムで詠まれており,思い出から,もの悲しさと望郷の念が伝わってくる。多くの参加者が共感した。梨畑は,神奈川県厚木市の「幸水」。作者の思い出は,梨畑の風景であるが,幸水のしっとりした甘さが広がってくるようだ。

第四席(一票)

「さようなら」見送りのあとぽっかりとすんだ空気に秋のあなあいた K.H.
大切な人がいなくなった後にあいたこころの穴。「すんだ」は「澄んだ」と「済んだ」の掛詞。「あなあいた」と,ひらがなにしていることにより,開いた穴の中が空っぽうである印象が伝わってくる。

天空はいよよ遥かに透きとおり茜に燃ゆるモンブラン見ゆ M.M.
澄み切った空気であれば,リヨンの高台からは遙か彼方に見えるモンブランまで見渡すことができる。しかし,リヨンから美しい夕焼けのモンブランが見える時は,翌日の天気は悪いと言われている。


夏過ぎて秩序回復せる国の風冷え冷えて立つモンブラン
 N.S.
フランスの夏は,気候が変化するだけでなく,国全体の機能までがバカンスモードに変わってしまう。このような国はフランスだけではないだろうか。下の句では,そのフランスの象徴の一つであるモンブランを詠み,フランス社会の風景であることを表している。

その他作品

暁の月ほの白く空青くただ静謐だけが満ちゆく世界 
東山魁夷の,紺色の空に大きな白い月が浮かび,地上をほの白く照らす絵のイメージ。フランスの旗「赤」,「白」,「青」を取り入れ言葉遊びの要素も。しかし,東山魁夷という前提がなければ,夜が明けていく時間経過の中で静けさが広がっていくというイメージは,不自然であるという指摘も。

あやしげにそよぐ風の中リンリンと鳴く虫たちの秋を呼ぶ声 
台風の前兆のような怪しい風。そんな中であっても庭では,秋を呼ぶように虫が鳴いている。「リンリン」のカタカナがあやしさを失わせているのか,または別の言葉でもよかったのではないかという指摘があった。

音たてて喰らいしそばの美味たるも焦がれし母国の装飾音 
作者は,そばを音を立てて食べることができないらしいが,日本のそば屋はわいわいがやがや音楽のように騒がしく,また,そばをすする音がその大音響の中であたかも装飾音として奏でられている。そばの味と風味も加わって,五感を刺激する歌である。

こっそりに入ったネズミ夜明けだが新しい日が始まる気持ち 
早朝に現れたネズミ。起こされてしまったのだろうか。イメージを膨らませる部分が少ないので,今後に期待である。
作者は,フランス人であるが,「けり」「たり」等の日本語の用法がわかりにくいとのことである。今後,歌会の規模が拡大し多国籍化した際,日本語を母国語としない人に対する勉強会の課題が提起された。

はつらつと明るい笑顔がうざい朝窓下の落差を斜視で見ている 
ノイローゼ気味の若者を歌った歌。下の句で詠まれている落差とは,若者が立っているところと地面までの落差。自殺について考えている。多くの意味や表現を歌に含める上で,大変参考となる作品である。

前をゆくテールランプを追ってればいつか私もロストするかな 
副題をつけるとすれば,「デヴィット・リンチに捧ぐ」。フランスの高速は,照明がほとんどなく真っ暗であり,前の車のテールランプを追いつつ走れば比較的容易に走行できる。しかし,長時間走っていると,目はチカチカ,焦点はおかしくなってしまい,彼の代表作「ロスト・ハイウェイ」のように別の世界へ行ってしまいそうになる。

もうやめてビリビリいててそこはだめ我慢が足りぬ過保護すぎたか
作者は,毎朝のジョギングの後の「またずれ防止」用テーピングをはがす時の痛さを詠んだが,上の句と下の句の関連性がなく,飛躍しすぎており,読者の想像力をかき立てない。



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勉強会の一場面。 お世話役&司会のN.M.さんはプリントに赤文字でメモを
され、しっかり準備されていました。お疲れさま。ありがとうございました。


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みなさん真剣に歌と向き合っております♪


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V.R.さんの両横は、今回見学参加のお二人。
次回からもよろしくお願いします。

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では、ほろ酔いの会を始めましょう♪ 来月司会担当のI.I.さんから乾杯のあいさつ♪


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今回もたくさんの素晴らしい歌が披露されましたね。 乾杯♪


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たくさんのワインとみなさんにお持ち寄り頂いた美味しいお料理を頂きましょう。


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美味しかったです♪


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今回初参加のTsu.H.さん、念願かなってご参加いただけてよかったです^^。

そして今までの最多得票を得て、自由歌部門堂々の第一席を得たZ.T.さん、
おめでとうございます^^。

みなさまお疲れ様でした。

来月の題詠は「色」です。いろんな色に染められた歌が披露されることでしょうね。そしてちょっと色恋の歌も・・?楽しみですね。

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10月の題詠、月にちなんで、前夜の曇り空に気まぐれに顔を出した満月の写真。

M.M.
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by tankalyon | 2012-10-04 21:22 | 歌会報告