リヨン日本人会短歌クラブ
by リヲンのつばさ
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2017年 第5回リヨン短歌賞の発表

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2017年9月7-8日の両日、大野道夫教授をお迎えして、第5回リヨン短歌大会が催され、日本語とフランス語の両部門で短歌コンクールが実施されました。
その結果を、以下、発表いたします。おめでとうございます。

日本語部門

第1席 白き水流れるように丘下る羊の群れの鈴の音続く 
   レリトー真美架 パリ

第2席 所在なく手足折りまげカマキリのごとく少年マンガにふける 
   今川美生 リヨン

第3席 数本のバーベキューしたソーセージを口から垂らしエミューの逃げる       ラム直子 オーストラリア
第4席 殺さずに済む研究はなくてねと友はネズミを数字に変える            奥村知世 東京
第5席 柔らかきオレンジの線描き込みて猫人形をつくる秋の日 
   野原亜莉子 東京

第6席 ルアンダの浜辺で鯛を釣る我ら黒き子供ら蟹と戯むる 
   浦田良一 パリ

フランス語部門

1er Prix : avec 9 points


De ses coussinets

sur la table de jardin

jonchée de pollen

elle signe son passage

ô son regard insondable


DanièleDuteil (Bretagne, France)


2ème Prix ex-aequo, avec 8 points


Soleil au zénith

dans l'ombre de l'abelia

fraîcheur apaisante

la chatte ronronne et rêve

que j'envie ce bonheur bête


CatherineMonce (PACA, France)

Nuit de pleine lune

dans le furtif d'un bosquet

croiser un renard

et toute ma vie rêver

que je suis le Petit Prince


NicoleGremion (PACA, France)

Dans le champ herbu

le mugissement du vent

un coup de fusil

là où gambade un lapin

sur ma photo de la veille


BrigittePellat (Languedoc, France)

Valse des flocons

sur le Massif des Ecrins –

près du lac gelé

une biche et son petit

s’abreuvent à même le ciel


SandrineWaronski (Île de France, France)

3ème Prix ex-aequo, avec 7 points :

Dernier soir d'avril

l'ombre d'un papillon fou

emmure la source

le babil de mon enfant

je ne l’entendrai jamais


Hélène Duc(Île de France)

Première sortie

sur le bord de la fenêtre

l'oisillon babille

et toi qui faisais pareil

tu commences à pérorer


MoniqueJunchat (Bourgogne, France)

Quelle peur soudaine

a chassé les geais criards

si tôt de leurs nids ?

à la fenêtre debout

je suis l'étoile filante


AlhamaGarcia (PACA, France)




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# by tankalyon | 2017-09-14 00:35 | リヨン短歌賞

題18回歌会報告(2013年12月9日)

とうとう大晦日ですね。
今年はどんな歌に出逢ったでしょうか。どんな歌人に惹かれましたか?
そしてみなさんご自身はどんな歌を詠まれました?

2014年も多くの素晴らしい歌に出会えますように。

さて12月の歌会報告です。

提出歌のまとめ訳はO.J.さん、ありがとうございました。

歌会の司会、そして以下の報告はI.I.さんが担当されました。
どうもありがとうございました。

みなさまどうぞご鑑賞ください。


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2013年12月9日リヨン歌会 


題詠「祭り」

第一席 六票

父母(ふぼ)がいてろうそく灯す弟とケーキがあれば祝祭だった O.J.

第二席 五票

夏の夜は金魚を掬ふ少年の最中(もなか)の溶けてもう還らない H.T.

第三席 二票 五首

さんざかのこみち上れば息しろく謝肉祭(カーニバル)あとの燃える人形 I.I.

マルシェ・ド・ノエルで探す失せものとゐるはずのない人の横顔  M.M.

日が落ちて三のニ会館盆踊り 手まね足まね幼き娘 Tsu.H.

夜半過ぎ流れ始めるクロクロ(Cloclo)に今宵も乗れずピスタチオ噛む  I.M.

電飾の祭り遠くにlumignons星の雫が窓辺にポトリ  M.Y.

白い息聖夜祭がくる寒い夜優しく光るオレンジの窓 M.J.

第四席 一票 二首

霙降り家路を急ぐ宵闇にボジョレ・ヌーヴォー笑み浮かびたり Z.T.

壁いっぱい映し出されるルミエール胸に焼付け寂しさ消して K.T.

佳作

ぴーひゃらら浮世の苦境忘れしや祭事の祭り麻薬の如し 

幾百の光の技の饗宴に凍える街は万華鏡と化す 


自由詠 
 
第一席 八票

「気持ちがね、なくなっちゃった」と呟いて見つめる光が終止符になる O.J.

第二席 五票

さとり世代 老人婚活 ニセ表示 祖国の新語は苦くて哀れ Te.H.

第三席 四票

もみじ葉に母国思ほゆくれなゐの逢ひたい人に逢へぬゆふぐれ
 M.M.

第四席 二票 二首

値は高め並んでやっと手に入れた具なし伸びラーメン虚しき事よ G.N.

この傘に降るこの雨はあの河にその大海にあなたの街に I.M.

第五席 三首

降りはじめ降りつづいてのち降りしきる回転木馬の秋のひとり夜 I.I.

月になぜ帰りゆきしか問はれたり異国の女(29歳)に H.T.

久々の真顔眩しい八十路前 充電なのよ日産リーフ  M.Y.

佳作 三首

落葉を踏みしめ進む走り人我も追いかけ微笑交わし 

手をつなぎ運動会でフォークダンス 胸をくすぐる カルピスみたい 

週末を娘に贈り満月に抱かれて逝きし母の声聴く 


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1月の歌会は13日(月)
第一回日仏合同歌会となります。

みなさま良いお年をお迎えください。

M.M.
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# by tankalyon | 2013-12-31 10:21 | 歌会報告

第17回歌会報告(2013年11月4日)

みなさま、遅くなりましたが11月の歌会報告です。

以下は担当のI.I.さんがまとめてくださいました。

I.I.さん、お世話役ありがとうございました。

どうぞご鑑賞ください。

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2013年11月4日リヨン歌会

題詠「実」

第一席  四票

文献の抜粋メモを束にして「今年の実り」とうそぶく自分  O.J.

第二席 三票

義父の葬儀にて
雨の朝一つの命土に帰し 実り豊かに引き継がれなむ  Z.T.

ま悲しきマロニエの実が落ちてゐるふたつあはせて家をつくらむ     H.T.

第三席 二票

朝露に凛と光りし赤き実のうつむきたるは祈りにも似て M.M.

第四席 一票

草の実をしっぽにつけて朝帰る鼻いきあらし若いオス猫      I.I.

佳作

雨の宵 静かに落ちたりんごの実 熟しきらずも初秋の香り

舶来の果実の中から親しげに吾を見るNASHI(なし)連れて帰らむ

焚き火の香 夕陽せおいし幼子の影つと長く赤い実ひとつ

なかなかと 実りならぬは 我が想い 秋空かけて 飛んで消え去れ





自由歌

第一席 四票

憂う目と喜びの目と恐るる目 仔犬の顔に我が心見る Tsu.H.


八十路前ポーズしてみる肘ついて...買っちゃったのよ~日産リーフ M.Y.
        注:日産リーフ=100%電気自動車(EV)


第二席 二票

母なくてわずかに暗く咲きにけりこの雛罌粟もあの曼珠沙華も  I.I.

第三席 一票

夕まぐれ白い茸が現れて大樹の洞にわれを誘(いざな)ふ    H.T.

翼廊で讃美歌さへも歌へぬもあたたかき手をのべられにぎる M.M.

佳作

プラタヌの落とす葉っぱはかさこそと秋ささやくも半そでTシャツ 

我が想い 胸の深みに 沈ませつ 苦味こらえて ほほえみ話す 



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M.M.
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# by tankalyon | 2013-12-31 08:48 | 歌会報告

10月歌会勉強会作品集

10月の推薦の歌、作品集をご紹介します。

みなさまどうぞご鑑賞ください。

■推薦歌
 
今はたゞ思はじとだに思はぬを涙や何のなみだなるらむ  樋口一葉 (M.M.選)

奥山に紅葉ふみわけ鳴く鹿のこゑきく時ぞ秋はかなしき  『古今集』猿丸太夫 (I.M.選)

終りなき時に入らむに束の間の後前ありや有りてかなしむ
  土屋文明 (H.T.選)

この煙草あくまであなたが吸ったのね そのとき口紅つけていたのね 佐藤真由美 (M.Y.選)

皆人は 寝よとの鐘を打つなれど 君おし思へば 寝ねかてめかも  『万葉集』 笠郎女(かさのいらつめ)大伴家持の彼女 (Y.K.選)
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# by tankalyon | 2013-11-03 01:30 | 歌会報告

第16回歌会報告(2013年10月7日)

冬時間に変わり、日に日に秋が深まってきました。
みなさまいかがお過ごしでしょうか。

さて、10月の歌会報告をいたします。

今回のお世話役はV.R.さん。
以下の詳しい報告もV.R.さんが執筆されました。

どうもありがとうございました。

みなさま、どうぞご鑑賞ください。

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リヲンのつばさ 二〇十三年十月七日 歌会 報告

題詠 『時』

第一席 5票

二十五時上がったままの踏切をゆっくり渡って一つ歳取る V.R.

第一席となったが、歌のイメージは意見が分かれた。踏切の向こう側を別世界のように捉
えたシュールな発想であるという意見と、終電後の暗い道で、一人寂しく誕生日を迎え
た、現実的な光景であるという意見があった。また、歌にゆったりとした感があり、平凡
な人生をマイペースで生きて行こうとする気構えが感じられる、と評した人もいた。一方
で、「二十五時」という表現は面白いけれど 特に斬新でもない、踏切を渡るという行為
とそこで歳を取る事の関連性が分からなかった。お正月の事だろうか?と戸惑う人もい
た。「渡って」を「くぐって」に、「一つ歳取る」を「歳一つ取る」にした方がリズムが
良いのでは、との示唆もあった。

第二席 (2首) 4票

老いるほど「時」は疾走するものと語りし母の歳になりけり Te.H.

実感がこもっており、多くの共感を集めた。わざとらしい技巧や気負いがなく、上手に纏
まっている。「老い」というと、ゆっくりとした時間の流れをイメージしがちだが、それ
に反して敢えて「疾走」という固い熟語を用いる事で、あっという間に過ぎてしまう時間
に対する作者の焦りも感じられる。また、このような作者を取り巻く「現在」の時間軸
と、「母」との関係性から「過去」そして「未来」へと脈々と続く時代の流れも同時に連
想される。

キミはたぶん覚えていない私には時効などない背表紙の滲み I.M.

「背表紙の滲み」が何であるのか、想像をかき立てる面白い歌である。「時効などない」
というサスペンス調の表現から強い恨みが感じられ、相手と自分の温度差に苦しんでいる
等、情念的な歌であるという意見が主流だった。一方で、子供に熱いスープをこぼしてし
まい、熱くて大泣きした子供の顔がずっと心に残って、背表紙のシミを見る度に思い出す
苦い思い出なのでは?というユニークな解釈もあった。そこから、確かに「キミ」があえ
て片仮名なのは、子供だからでは?という疑問も出席者一同に生まれた。

第三席 1票

あと5分あればマニキュア塗れるのに 21時の君を待たせて M.Y.

フレッシュで若々しい感じが溢れている。一方で、分かりやす過ぎ、含みが無いという意
見もあった。上の句と下の句の関係性は分かるのだが、読んでどこかしっくり来ないのは
助詞のつながりが悪い為では無いだろうかと、一同でしばし添削を試みた。「21時の君
を待たせて」を「21時に君が待つから‥・」等に変えたり、上下を入れ替える事でもっ
とすっきりさせられるのではないか。

腕時計 電池替えてもすぐ止まり 寿命が来たね ああ三十路 O.J.

ユーモラスな歌だが、もう少しひねりがあれば歌として更に良くなるだろう。三十路が腕
時計なのか自分なのか、あるいはその両方なのか、分からなかったという意見もあった。
最後は字足らずなので、「三十路かな」などにすれば安定するのでは。

過去未来時の流れに身を任せ今を生する使命なにとぞや 
G.N.

毎日過ぎて行く日常の中で己の使命を考える事も無く、ふと気づけばあっという間に歳を
重ねてしまったという、忸怩たる思いに共感出来る。リズムが良いという一方で、観念的
な言葉が多すぎる、という意見もあった。「なにとぞや」は文法的に誤りではないだろう
か?字余りでもあるし、「なんぞや」もしくは「なにとぞ」の方が違和感がないのでは、
との示唆もあった。

-サモエドの子犬を家に迎えて-
白い毛の小さき物を叱る時あくまで青い空目にしみて Tsu.H.

上の句と下の句の関連性が希薄と言えば希薄だが、全体的に幸せな情景として読み取れ
る。生き物なので、「物」は平仮名の方が良いのでは?という意見もあったが、作者は現
在この子犬の教育中で、怒る時は「物」のように力で押さえつけなければならず、その難
しさや哀しさを表現したく、敢えて漢字にしたとの事。無事にトレーニングが終了した暁
には、是非可愛いわんちゃんを歌会にも連れて来て欲しいものである。

空高く上りたるのち時を経て落つる棒(トーチ)の火を吹くわれは H.T.

「上りたる」→ 〜時を経て〜 →「落つる」という構成が、視点の動きを伴う歌の展開
となっていて面白い。読者も歌の展開と同時に、スローモーションでトーチの火が落ちて
来る地点まで移動するかのようだ。「トーチの火」はオリンピックの事か、または大道芸
人か?等と意見が分かれた。少し難解すぎて投票には至らなかったようだ。

堕落したき若者まねてあるきたし渋谷の夜の二十二時過ぎ I.I.

渋谷の若者を羨望の目で見ている事から、若い時に不良っぽい事が出来なかった事を悔い
ているのだろうか。真面目に生きて来た人が道を踏み外してみたい願望に捉えられている
ような、ミドルエイジクライシスが感じられる。一方で、22時で「そろそろ帰らないと」
と思っているようなあたり可愛い感じもし、「渋谷の22時は堕落したうちに入らな
い!」という意見も多かった。「夜の」「二十二時過ぎ」の意味がやや重なるので、どち
らか一つで良かったのでは、とい示唆もあった。

幻とうつつをゆきつ砂時計砂かたまりて 時は途絶へぬ M.M.

機能を果たさなくなった砂時計のイメージが、時が止まったイメージに重なって美しい。
一方で、「時は途絶えぬ」が観念的過ぎて、歌のイメージが膨らまないとう意見もあっ
た。作者のメランコリーは伝わるものの、どこか淡々としていて、その人らしい個性が感
じられないのが、投票に至らなかった所以であろうか。

ローヌ橋越えつつ数う過ぎし日で軽く計算あと幾ばくか K.T.

橋を渡っている最中に、ふと日常から一瞬解放されて感傷的になったりするのは、誰しも
に共通するらしく、投票者もとても共感したとの事。橋の下を滔々と流れる河の様子が琴
線に触れるのであろうか、または向こう岸に渡るという行為が暗示的な為であろうか。作
者の日常を切り取った視点はとても良いが、少し読み辛くもあるので、言葉の順番を変え
たり、削ったりする事で、もっとすっきりさせればさらに良い歌になるだろう。

佳作

時は今 ここに集いし 志 新しき歌 飛べ空高く 

短歌クラブへの祝福を詠んだのであろう、その気持ちはよく伝わるが、学校の唱歌のよう
にストレートな余り、短歌としての工夫が足りなかったのが投票に至らなかった原因のよ
うだ。しかし、佐佐木信綱は全国で数多くの校歌を作詞した事実を鑑みると、この歌もい
つかリヨン日本人学校の校歌となるやもしれない。

虹色の路面電車(トラム)行き交うマルス門 次の千歳に何を見るらむ 

「マルス門」が具体的にどの街のマルス門なのか分からず、前後との関連性が掴めなかっ
た。作者によると、このマルス門はランスにあり、3世紀の建築物だという。そのような
古代建築の前を、現代では様々な色をしたトラムが行き交っており、古代と現代の融合し
たその光景を見て、この地で今後も脈々と続いて行くであろう歴史の流れに思いを馳せて
詠んだそうである。「マルス門」のイメージが湧かなかった事で、「次の千歳に何を見る
らむ」が生きて来なかったのが残念。「ランスにて」などヒントとなる題をつければ良
かったのではないか。

見ぬうちにこんなにおおきくなったのと社交辞令がまことになる時 

発想は個性的で面白いが、作者の驚きや感慨が想像されるものの若干物足りなく、投票に
は至らなかったようだ。「見ぬうちに」を削り、「社交辞令がまことになる時」の作者の
感情やその時の情景をどこかに具体的に詠み込む、または「こんなにおおきくなったの」
を「『こんなにおおきくなったの!』」に強調する等、工夫する事でもっとイキイキした
歌になるのでは。

自由詠

第一席 (2首) 4票

弔いのあけた翌日旧友が来て除草剤まかぬというワイン飲む  I.I.

生と死が交差する一瞬を切り取った、とても上手な歌であり、第一席となった。冒頭の
「弔い」という暗い状況から、下の句はどこか楽観的というか、爽やかに締めくくられて
いる。まさに「朋有り、遠方より来る、亦楽しからずや」の世界観で、作者も旧友の来訪
に心が慰められたのであろうか。上の句には過不足なく情報が詰まっており、下の句の字
余りも気にならない。「除草剤まかぬというワイン」とは恐らくBIOのワイン事であろ
う。

指先に秋色をのせ固めたり剥がれゆくまで君よとどめむ V.R.

マニキュアを扱う様子を「指先に秋色をのせ固めたり」と表現したのが面白く、多数に支
持された。「君」を想う相聞歌だが、視線が自分の指先に止まっているせいか、閉塞感が
あり、メランコリックな雰囲気である。一方、「君よとどめむ」が願望なのか、意思なの
か分かり辛いという意見が多く、「君よ」は「君を」とした方が良かったのでは、という
示唆もあった。

第二席 (3首) 3票
-子犬のスワン-
スワン君口に小枝をくわえたり 右に左に小毬のごとし Tsu.H.

コロコロとした可愛い子犬の様子が素直に描かれており、作者の愛情もストレートに伝
わってくる微笑ましい歌である。「くわえたり」の「たり」が、文語の「たり」にも、並
列の「たり」にも読めて面白いという意見もあった。一方で、「小毬のごとし」という直
喩を避けて、「小毬が走る」や「小毬が弾む」とした方が良いのでは、という示唆も出
た。

突然の子の発熱に忌むべくは明日の仕事を案じおる我 I.M.

特に女性の共感を呼んだ歌である。「忌むべくは」という表現について、強すぎるという
意見と、母親の罪悪感や母性神話に苦しめられる心の葛藤が表されていて大変良いという
意見に分かれた。日常の生活を読む事は、メッセージ性が強過ぎては仰々しく、かといっ
て単なるメモになっても面白く無く、意外と難しい。「『あっ』と感じる気持ちが種に
なって歌は生まれる」と俵万智が 指南しているいうように、我々も日々の「あっ」を見
逃さずにいたいものである。

わんこ宛て予防接種の案内を読む瞳の中に彼が凛々しく
 K.T.

一読では良く分からなかったが、語感が良く、コミカルな雰囲気で個性的な歌である。
「瞳」が犬の目なのか、作者もしくは作者以外の飼い主なのか。同様に、「彼」は犬を擬
人化しているのか、飼い主なのか等、良く分からないの点の推敲が必要かもしれないが、
逆にそこが面白いという意見もあった。冒頭の「わんこ」という近年すっかり定着した単
語も、作者の愛犬家ぶりを暗に伝えていて微笑ましい。

第三席 2票

マルワン(サン-マロの人)の生まれ変わりしゴエランの声哀しくて秋呼び寄せむ Z.T.

灰色の海などのしっとりとした情景を想像させる歌である。サンマロにも港町にありがち
な伝説(海に出て帰って来ない男など)があるのだろうか。「ゴエランの声」が物悲しい
秋のイメージにぴったりという意見がある一方で、下の句が少々演歌的で個性が無いとい
う意見に分かれた。

第四席 1票

海賊の砦に立てるわがまへをカモメゆきかふ気流に乗りて H.T.

文字通り、海岸沿いに築かれた古の要塞からカモメを見ているとも読めるし、作者が「海
賊の砦」に捉えられている=自由を奪われた存在で、カモメ=自由を羨ましげに見ている
事の暗喩とも読める。現実を詠んだのならば「海賊の砦」がどこなのか気になる所。その
場合は題に「〜にて」等とすれば、短歌紀行としても十分魅力的な一首になるであろう。

掻き分けよ!かの収集車来るまでは都市住民の宝探しよ N.M.

「掻き分けよ!」の感嘆符が効果をなし、歌全体にスピード感がある。投票者は日本在住
時代、社宅に住んでいる為に隣人の目を気になる友人に頼まれて収集場に物を探しにいっ
た思い出があるそう。作者は毎朝通勤途中にゴミ箱を漁る人達に遭遇し、彼らは過去に何
か掘り出し物を見つけたり、大金などのびっくりするような物を発見する事を期待してい
るんだろうか?と考え、詠んだ歌との事。

ゆくりなくふるる夕露秋の草月に照らされそと光りをり M.M.

古典的でとても綺麗な歌である。「ゆくりなく」は何気なく、思いかけなく、突然に等の
意味があるが、そのどれとも取れるのが面白い。同様に、「ふるる」は「降る」なのか
「触れる」なのかも読者にははっきりしなかったが、どちらにしても歌全体のしっとりし
た雰囲気は変わらない。古語は使うのも難しいが、読む方も難しいと一同納得。

佳作
いさかいの炎われ焼く歯はきしる臓腑をえぐる言葉がほしい 

激しさが潔く、「侍のような」と評された、素直で力強い歌である。またリズムも良い。
作者は「臓腑をえぐる」という表現を使ってみたかったそうだが、「炎」「焼く」「きし
る」とまさに業火のイメージが連なり、些か単調にも感じられるので、展開があればさら
に面白かったかもしれない。

銀鉱山聖母に祈りし親子ペアー過酷な仕事落ちれば地獄湖 

メキシコの銀鉱山で働く親子を扱ったドキュメンタリーに触発されて詠んだ歌だそう。小
さな籠に子供を乗せて吊るしながら下ろしていくという危険な作業は親子でなければとて
も出来まい。過酷な労働環境と、その下の美しいコバルトブルーの湖とのコントラストが
とても印象的だったとの事。歌としては、情報がやや多すぎて、「銀鉱山」「聖母」「親
子」「地獄湖」とイメージが散らばっている印象がある。例えば、「メキシコの銀鉱山で
働く親子」などと題をつけて、歌の中ではどれか一つのモチーフにフォーカスするなど工
夫すれば、もっとすっきりするのではないだろうか。

されど今 この心もて 君に逢い 涙かれはて 何をつたえん 

冒頭の「されど今」という始まりは颯爽としていて、ぐっと引き込まれる。しかし上の歌
とは反対に、その後の情報が少な過ぎて読者の共感を得るには至らなかったようだ。一つ
一つの句は纏まっているのだが、「この心」とはどんな状態なのか、涙が枯れ果てたのは
何故なのか、等々具体的に描ければ歌に広がりが出るのではないだろうか。また、句間の
一字空けが気になるという意見もあった。

23 :00 (にじゅうさんじ)ネクタイほどく肩越しに月の明かりとその先の闇 


男性が一人なのか、ネクタイを解く様子を見ている別の人物(恐らく女性)がいるのか、
意見が分かれた。男性が一人の場合は鑑に映した自分の肩越しに月を見ている孤独な、疲
れた様子が読み取れるし、二人ならば何やらアダルティな雰囲気が醸し出されて、全く印
象が変わって面白い。

もう秋だ! と喜んだのに暑くなり サングラスなく光にめげる


夏の間は強い日差しにサングラスが欠かせないフランスならではの歌である。フランスの
秋は気まぐれで真夏のような日があったり、厚手のコートを出したくなるような寒い日が
あったりで、なかなか落ち着かない。それらの陽気を繰り返しいると、いつの間にやら長
い冬がすっかり腰を落ち着けているのである。読者の多くもこの歌のような経験があるの
では。歌としては、もう少し展開があればさらに面白かったであろう。

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V.R.さん、読みごたえのある細やかなコメントありがとうございました。

11月歌会は4日、題詠は「実」、石田さんが担当されます。
よろしくお願いします。


M.M.
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# by tankalyon | 2013-11-03 00:43 | 歌会報告